2013/02/24

テニスコート


テニスコート / り・ぼん(2012.08/10-13 こまばアゴラ劇場)

テニスコートは美術大学出身の3人からなるコントユニット。2002年頃から活動し、既に10年も公演を続けていたということだから、10年近くも僕は彼らを知らずに生きてきました。なんということだ。なんとも悔しい。でも回り回って出会えて本当に嬉しい。僕が実際に公演を観に行こうと思ったきっかけは映像作品「今日のジャケッツ」でした。北半球で一番くだらない番組を彷彿させる作風があまりにも面白くて公演があったら是非行こうと心に決めていたのでした。

彼らは立花文穂さん責任編集の「球体」という雑誌で連載を持っていたり、サイトでおやデジみなさいというデジオをやっていたり、メンバーの神谷さんは「あたらしいみかんのむきかた」や「トリック野郎」でイラストを描かれていたり、吉田さんは法廷画家だったり、小出さんはLINEアニメの脚本を手がけていたり、サブメンバーの山口智子さん(あっちの山口智子さんではありません)はミュージシャンとしてライヴやCDをリリースしていたり、個々でも素敵な活動をされてるようです。

そんなテニスコートのコントを去年のお盆に初めて観に行ったのだけど、これがとても面白かった。アーティスティックでシュールに違いないと思い込んでいたのだけど、そんなことはほとんどなくて彼らが言う分かりやすいナンセンスコメディで親近感の湧くものだったのです。最初のコントでトロフィーを片付けながら♪トロフィ〜って歌われた時はどうしようかと思ったけど…(笑)。でもこれが後半、ビートルズのLet it Beのメロディーに変化したときに一気にズルッと嵌められた。そして確信したんだよね。「今日当たり引き当てた!」って。で、後悔したよね。「友人も誘えばよかった!」って。や、誘ったんだけどことごとく断られたんだよ(笑)。

なんか演劇部がやるコントじゃなくて、美術部がやるコントって感じのさらりとした空気感がとても好きだったな。そしてきっとごっつ世代ですよね。カラオケボックスやスケベ椅子のコントはそんな雰囲気が感じられました。自分が面白いと思うものを表現するのにアートもコントも隔たりはないんだろうね。メンバーのそれぞれの作品、例えば神谷さんのイラストや山口さんの歌う曲も素敵で面白いし…。

彼らのコントと同じくらい好きなのがサイトで不定期で更新されるデジオ、「おやデジみなさい」。中学受験を控えた小学生に向けたポッドキャストなんだけど、これの前口上がすごく好きで…。ピアノのイントロとともに、こんな感じで始まります。

塾帰り
親が運転する車のなか
流れる街灯を見つめながら
聴いてくれているのかな

自分は小学生ではないので小学生モードに切り替えて聴きます。深夜にiphoneで聴きながら眠りにつくのが心地よい。このデジオは実際に起こったちょっとマニアックな「おやデジニュース」をメインに毎回話が広がっていきます。そして回によっては小学生向けじゃないんじゃないかと思うワードも飛び出てきたりして、そのときだけ大人モードに切り戻します(笑)。以下、自分にとってホームランだった回を3つほどセレクトしてみました。

愛犬テツ Listen >>
日本通販が後期に販売した迷品、「愛犬テツ」について。
神谷さんの「えっ」って反応が個人的にツボでした。

5年目の Listen >>
深海生物、ダイオウグソクムシについて。
とりあげるものがダイオウイカじゃないところがまたいい。

どんだけ Listen >>
「氏」をつけたことによって引き起こされる笑い。
ここのくだりは何回聴いても面白い。

きっと今年もどこかで公演をやってくれると思うので、楽しみに待ってます。できれば年に2回くらいやってくれたらファンとしては嬉しいところ…。そして最後にこちらをオススメしておきます。彼らのコントの片鱗が少し見えると思うので是非。ラストのボーナストラックである山口智子さんの弾き語りまで聞き逃せません。

テニスコートの Play List Listen >>

今年も良いコント作品に出会えますように。

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2012/12/31

Top 10 albums of 2012


Top 10 albums of 2012

今年よく聴いた作品を振り返ってみました。

10. Wild Nothing / Nocturne (Captured Tracks) 
音より何よりまずこの4ADやストーンローゼズの1stを彷彿させるマーブリングジャケットが素晴らしい。前作よりポップでまるでペイル・セインツみたい。週末は月を眺めつつ一杯やりながら聴くのが本当に心地よかったな。

♪Listen!


9.Evening Lights / The Disappointment (Shelflife)
シェルフライフのオーナー、エドとローラが在籍していたバンドのお蔵入りになっていたアルバム。 サンデイズ・ミーツ・シューゲイズって形容もできるけど、インディポップを進化させた、やっぱり彼らにしか出せない音になってると思う。

♪Listen!


8.Beach House / Bloom (Bella Union)
前作からより透明度が増して、スケールが大きくなりましたよね。ヴィクトリアの声は優しくて、温かくて、力強くて、頼もしい。ドット部分が暗いところで光る特殊ジャケットも地味ながらグッときました。だってこの作品は眩い光に包まれているから。

♪Listen!


7. Literature / Arab Spring (SQUARE OF OPPOSITION)
パンク魂が根底に流れる瑞々しいギターポップ。70'sパンク〜パワーポップ、ネオアコファンまで繋いでしまう素晴らしさ。「生きるのめんどい」とか言っている自分に喝!を注入してくれたような気がします。

♪Listen!


6.Young Guv & The Scuzz / A Love Too Strong (Southpaw)
Marvelous DarlingsでおなじみBen Cookによる別バンド。ヴェルクラ〜DM3を彷彿させる入道雲パワーポップ。特にエルヴィス・コステロを爆走させたようなめちゃくちゃポップなラスト曲は絶品でした。

♪Listen!


5.Dylan Mondegreen / Dylan Mondegreen (Shelflife)
ある日試聴ページから流れた♪Yesterday When I Was Youngの泣きメロっぷりに感動。9曲と少ないながらも粒ぞろいの名曲ばかりで、彼の作品の中で今作が一番好きかもしれない。涙が出るくらい優しい音楽。

♪Listen!
 

4.Spotlight Kid / Disaster Tourist (Saint Marie)
イギリスのシューゲイズバンドの2ndアルバム。今年リリースされたシューゲ作品の中では楽曲がダントツでよかった。音も1st路線を進化させた内容。さすがは元シックス・バイ・セブンのドラマー。手数の多いドラミングがかっこいい。

♪Listen!


3.Airiel / Kid Games (Shelflife)
まさに待望の新曲。バンド色は薄いけど、繊細で美しいメロディラインが際立つ作品。1曲目からいきなり宙浮けます。ラストは甘くて切ない名曲!やっぱり現代版ライドは彼等なんじゃないかなって思う。来年こそ是非アルバムを!

♪Listen!


2.Big Pink / Future This (4AD)
意外にもよく聴いたのがイギリス2人組のセカンドアルバム。今回はヒップホップがテーマになっていて、すごく面白い作品になってる。特に2曲目の"Hit The Ground (Superman)"は何度自分の背中を押してくれたか…。クレイグ・コステロによるインクドリップなジャケットもインパクト大でかっこよかった。

♪Listen!

1. California Wives / Art History (Vagrant)
シューゲイズやポストロックに80’sなサウンドを取り入れた、ありそうでない青春ギターポップ。最近「泣き」を感じさせる音楽が少なくなった気がしたんだけど、ここには自分が求めているもの全てが入っていました。

♪Listen!



すぐに閉鎖してしまいそうな当ブログは1年間なんとか続けることができました。元々は文章を普段から書くクセをつけようと思って始めたんだけど…。自分のエントリを振り返って読んでみると同じ事ばかり書いてて呆れる(笑)。来年も引き続きぼちぼちと更新できたらと思います。

来年も良い作品に出会えますように。

2012/11/11

California Wives


California Wives / Art History (Vagrant)

免許の更新に行くとき、このアルバムを聴きながら大通りを自転車で走ったのだけど、本当に気持ちがよかった。天気がすごく良くて、空が高くて、気温も丁度よくて、適度に風もあって、まさに彼らの音にぴったりでした。

カリフォルニア・ワイヴスはシカゴのバントで、これがデビュー作だそうです。先月惜しくもクローズしてしまったfav(b)様のブログで知った、とても素敵なギターポップバンド。一聴してあまりにも綺麗で透明感のあるメロディとサウンドに打ちのめされて、アルバムのリリースを楽しみにしていました。特別なことはしていないけど、バンドサウンドを基本にしながらも、適度なエレクトロニクスのアレンジが新鮮で、二ュー・ウェイヴの影響がよく出ていると思いました。さらにシューゲイズやポストロック、エモ系バンドの要素も感じられて、そこがよくあるギターポップバンドとは一線を画すところだなぁと。

彼らが影響を受けたアートワークというテーマでインタビューが載っていました。そこにはヴォーカル君が選んだデヴィッド・ボウイ、ライド、ブライアンイーノ等、数々の名作のジャケットが並んでいて、それは彼らの音にも少なからず反映されていることが作品を聴いててよくわかりました。彼らのサウンドが色々な要素を感じさせるのはこういうことだったんだと納得したんです。 リアルタイムのバンドのルーツを辿るのは楽しいね。それがきっかけで聴いたことがないジャンルの音楽にも興味が持てたり、世界が広がったりする。ブライアンイーノなんていまだに開拓していないのだけど、シューゲイズにも多大な影響を与えたのだから、聞いてみようかなって。



彼等の音を聴いていて色んなバンドが頭の中に浮かんできました。先述したライドはもちろん、ペインズ、ブラザーカイト、ジミー・イート・ワールドやラスト・デイズ・オブ・エイプリル etc…。彼らは90年代の雰囲気を感じさせつつ、今のフィルターを通した、なんとなくシルキーで都会っぽいイメージ。そんなアルバム2曲目、"Tokyo"はそんな都会のことを歌っているのかな。遠いシカゴから見た東京はどう映るんだろう。キラキラしているように見えるのかな?実際は楽しさと虚しさが同居してるところで、この曲の切ないメロディがそれをより際立たせていると思います。「イベント、思ってたより人が入らなかったね」なんて反省しながら帰り道を歩く夜明けの東京…。Pet Shop Boysの"Home and Dry"みたいなイントロもなんてドラマティックなんだろう。3曲目の"Marrianne"はエレポップバンド、New Musikを思い出しました。アレンジといい、メロといい、影響されてるんじゃないかな?アートワークも並べてみると似ている!7曲目の"Purple"はこのアルバムの代表曲といえそうな、青春疾走ギターポップ。まさに大通りを自転車で風切って走っていくイメージ。9曲目の"23"はJimmy Eat Worldみたいなメロディでこれまた泣ける(ジミーにも23という曲がある。やっぱり影響受けてるのかな?)。この曲は後半に行くにつれてテンションが上がっていく展開で、沸々と勇気がわいてくる感じが好きです。これを電車の中で聴きながら出勤すると、けだるい月曜日もこの曲のおかげでしゃきっとなります。
とまぁこんな感じでアルバム通して泣きメロ全開!本当にいい曲が多いです。これ聴いていると外に出てきれいな景色が見たくなる。

タイトルのアートヒストリーという名の通り、アートワークも美術館のギャラリーを切り取った写真が印象的。このミニマルな感じも彼らのサウンドを象徴していますね。スリーヴの中には正にアートヒストリーが円状グラフで載っていて面白い。これを脳内でミュージックヒストリーに置き換えて見るのも楽しめていいかもしれない。


で、このジャケット、この空間に何か並べたくなりませんか?「君の中で思い浮かんだイメージを飾ってくれ!」って言われているように思うんです。それこそヒストリーなんだから時系列に彼らのルーツになったジャケットを並べてみるのはどうでしょう。ヴォーカル君が選んだDavid Bowye、Ride、Brian Enoはまぁ飾りましょう。僕はそこにNew Orderの"Republic"、Blue Boyの"Bank Of England"、Pet Shop Boysの"Release"、New Musikの"From AtoB"も飾りたいなって思いました。他の人は彼らの曲を聴いてどんなアルバムをここに飾りたくなるのかな?もちろん音楽じゃなくても、写真でも絵でもなんでもいいと思います。イメージすることって大事なことだし、このアルバムが「自分の作品」となって、かけがえのないものになっていくと思うので…。

さて、明日もこのアルバムを聴きながら出勤です。そしてもう2012年も終わりが近づいています。ラストを飾る"Light Year"を聴きながら、今年を振り返りつつ来年の目標も考えないとね。

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