2013/06/01

Silver Screen


Silver Screen / The greatest story never told (Clairecords)

今年8年振りにリリースされたニューアルバムがギターポップファンの間で名盤入り確定になっている、繊細でどこまでも美しいメロディを紡ぐアーティスト、シルバー・スクリーンの1stアルバム。

彼の音楽を初めて聴いたのはシューゲイズ・レーベルのclairecordsからリリースされたコンピ、test tones vol.1でした。このコンピのラストを飾っていたのがアルバムにも収録されてる"all i have"のデモヴァージョン。でもこれを聴いた当時は正直あまりパッとしなくて、よく通っていたレコード屋さんから、「今度シルバー・スクリーンってのが入荷しますよ」って言われても「ふーん」って感じでスルーしていたのです。その後更に同レーベルからリリースされたnotes from claire(おいしいトコどりのレーベルコンピ)にもシルバー・スクリーンが入っていて、とくに期待しないで流していた深夜、体に電流が走った…。な、なんだこれは、めちゃくちゃいいじゃないかと。そして心の中で思いっきり彼に謝って、すぐさまレコード屋に駆け込みました。それくらいこのコンピに収録されていた"something to prove"という曲はドリーミーで美しく、大好きなラヴダンスやブルーボーイを思わせる感動的な曲だったのです。

その後アルバムを聴いたらいい曲のオンパレード。ハイトーンヴォイスにスロウダイヴやコクトーツインズを彷彿させるシューゲイズなギターサウンド。切ないメロディを何倍にも輝かせるアレンジ…。シューゲというより、ネオアコと言いきっていいのかもしれない。アコースティックな曲もあるし、彼が影響を受けたというトラッシュ・キャン・シナトラズを始め、サラ・レーベルの数々の素晴らしいバンド達へのリスペクトをひしひしと感じたから。デモで聴いていた"all i have"は生まれ変わってびっくりするくらい煌めいていました。アレンジひとつで曲の印象はかなり変わるんだと、改めて思い知らされた瞬間でもありました。ネオアコファンからすると2、3、8、10曲目は無視できないよね。特に10曲目の"rockinghorse road"はかなりの名曲だと思ってます。これを聴いたとき、もしかしたらトラキャンと肩を並べるくらい好きかもって思いました。というか回数で言ったらシルバー・スクリーンの方が全然聴いてるよ…。

アルバム全体的にはやっぱり夕方の海辺のイメージ。寄せては返す波のような、美しいコーラスがたくさん聴けます。汚れた心も彼の作り出すメロディでサラリと、でも優しく流してくれる気がします。一人で海辺情緒にひたる曲もあれば、ラストの方で聴ける"girl like you"みたいに波打ち際ではしゃぐようなアップテンポな曲もあります。ネオアコの人達ってほんとに海が好きですね。自分は実際に海はそんなに行かないけど、音楽の中でだったらもう数えきれないくらい海に行ってます。よく飽きないよねってくらい。というか自分が聞いている音楽はほとんどが海っぽいのかもしれない。だからもし「どんな音楽が好きなんですか?」って聞かれたら、「海辺みたいな音楽」って答えようと思います。「じゃあ湘南乃風とかキマグレンですか?」って返されたら、シルバー・スクリーンを聞かせようと思います。「なーんかオシャレっすねー!」「……」。

そんなことよりこのCDジャケット、海辺みたいな音のわりにはレッドを基調としたアフリカのサバンナの風景なんです。これはこれで広大なイメージと合ってるのかもね。キリンがいいアイキャッチになってて、裏ジャケにもキリンがワンポイントにあったりして可愛い。このアートワークってアントニオ・カルロス・ジョビンの「WAVE」にインスパイアされたのかな?あっちもタイトルがタイトルなだけに海がテーマになってるし…。あと名前がシルバー・スクリーンなだけに表記部分が銀の箔押しになってて凝ってるんですよ。フォントもちょっと変わってて宇宙っぽい。宇宙っぽい=自然風景=奥行きのある音空間。もしかしたらこの作品はネオアコ版チルアウトなのかもね。

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