2012/04/01

Glo-Worm


Glo-Worm / Glimmer (K Records)

春になると無性に聴くたくなるのがこのグロー・ワームのアルバム。グロー・ワームというのはゴムで出来たおもちゃのことだそう。もっと他に良い名前はなかったのか?と思うけど、なぜか耳に残るのでこれはこれでいいのかも。歌っていることがきっと恋愛のことなので、アートワークも恋愛映画のワンシーンを切り取ったようなイラストが印象的。ギターはセント・クリストファー(!)のテリー・バンクス、ヴォーカルはいくつものバンドを渡り歩いて来たパム・ベリー。基本はこの2人によるユニットだと認識しています。

まるで木漏れ日のようなアコースティックギター、美しくこだまする繊細な女性ヴォーカル、切なくて儚いメロディが次々と繰り広げられます。基本はギターとヴォーカルだけなのに、こんなにもイマジネーションが広がるなんて。1曲1曲が短いのも儚さやもろさが余計出ている気がする。春なんて、良いことなんて、すぐに過ぎ去ってしまう。当たり前だったものが急に目の前からなくなったりして、でもその現実は受け止めていかなきゃいけなくて…。決して後ろ向きなことではなくて、「微かな光」と名付けられたこのアルバムを聴いて、少しでも前に進むことができればいいなぁと思うわけです。

15年前に出たこのアルバムが今でもこんなにも光り輝いているのは単純に素晴らしいメロディと歌心に尽きる!捨て曲が無い上にアルバムとして風通しもよくて本当に心地が良い。1曲目の「Travelogue」のイントロからして彼らの世界に引き込まれてしまいます。トレイシー・ソーンや、アリソン・スタットンなんかが引き合いに出されるけれど、個人的にはそれらと肩を並べてもおかしくないクウォリティだし、この切なさは彼ら独特のものといえます。

このアルバムには4つのカヴァー曲が入っていて、まずは大好きなキュアーのFriday I'm In Love。あのドラマティックな曲がさわやかでドリーミーな曲に生まれ変わっています。ペトュラ・クラークのDown Town、シャルル・トレネのBeyond The Seaはどちらも古い曲で、歌っている人が分からなくて思わず調べてしまった。でもこういったカヴァーがオリジナル曲と違和感無く入っているというのはすごいことだなぁとしみじみ思う。そしてこれまた大好きなヴェロシティ・ガールのCrazy Townのカヴァーも完全に彼らのものにしていて素晴らしい。

それにしてもヴォーカルのパム嬢はすごいですよ、なんてったってシューゲイズバンドとしても名高い元ブラック・タンバリンのヴォーカルなんだから。20年経った今、彼らから影響を受けたバンドは本当にたくさんいるはず。Dam Dam GirlsだってVivian Girlsだって、Pains of Being Pure at Heartだってブラック・タンバリンの元で育ったようなものです。って言い過ぎか…笑。

ブラック・タンバリン解散後にギターノイズを捨ててこんなに繊細なアルバムを作るなんてすごいなぁ。でも彼女のヴォーカルの魅力はこういったアコースティックな作風に合っている気がするんだよね。このあとに彼女がやっている数々のユニットはどれも美しいアコースティック・ポップなものばかりだし。それに反して最近知ったのはブラック・タンバリン再結成のニュースで、なんとラモーンズのカヴァーEPを来月出すのだとか。リアルタイムのバンドの影響で本家が再び動き出すとは、なんてタフなんだろう。個人的に再結成があまり好きでない自分としては複雑だったりするけど、なんだかんだ楽しみでもあったり。

そんなわけで彼女の活動からはまだまだ目が離せません。いつかきっと出るよ、パム・ベリーのトリビュートとか、アンソロジーが。それくらい魅力的で才能のある、シンガーソングライターなのです。

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