2015/02/24

The Hang Ups


The Hang Ups ‎/ He's After Me (Clean / 1993)

アメリカはミネアポリスのバンド、ハング・アップスが93年にリリースした1stアルバム。世間的には青春してる2ndが人気でギターポップのマスターピースになっている。言うまでもなく2ndは素晴らしい名盤だけど、ここ2年くらいはこの1stばかりリピートしています。シンセとか打ち込みとか多様なアレンジが施された音楽も好きだけど、そういうのを聴いた後って、やっぱりシンプルなバンドサウンドが聴きたくなるんですよね。

最初聞いた時の印象は地味だなぁということ。おそらく人によっては即中古屋行きですね。メロもそんなに強いわけではないし、これといったキラーチューンは1曲目くらいかもしれない。でも音数が少なくてシンプルなメロディ構成、クリーントーンで時折被さるノイジーなギターはここでしか聴けないもの。そして2ndよりも音に透明感があり、それでいて寂しい曲が多いのが、耳に引っかかった要因なんだと思います。そしてこの音の隙間が、虚しさや切なさを生んでいるのです。

1曲目は2ndの日本盤のボーナストラックとしても収録された、このアルバムのリード曲とも言えるナンバー”Waiting”。こっちのオリジナルヴァージョンのほうがノイジーでアップテンポだったりして、個人的に好きだったりします。La'sの"There She Goes"なメロディで、思わず頬がゆるんでしまう。2曲目の"He's After Me"は彼らの楽曲の中でも特にシリアスなロックナンバー。最初聞いたときは全然好きになれなかったけど、今聞くとクールでかっこいい。これがリリースされた93年はグランジが流行っている頃で、その影響がアルバム全体にも、特にこの曲から感じます。

3曲目の"Sleepy"は虚しさが滲み出てる切ない1曲だし、それに通じる9曲目の"Hit the Ceiling"もすばらしい。なんてことない曲だけど、歌い出しからして頭から離れない泣きのフックラインが印象的。心にぽっかりと穴があいたような空虚感。でもそこに悲しく響くギターのアルペジオがさらに胸を締め付けます。6曲目の"Curtis"はアルバム中一番ノイジーなんだけど、あくまでも爽やかさをキープしているのがたまらない。それにしてもボーカルのブライアンの美しいハモリはこの頃から確立されてるんですね。まぁ2ndではこのコーラスワークがさらに開花するんだけども。

ラストの"Runway"で明るく、未来に繋がっていく感じもいい。Runwayって滑走路って意味みたいだけど、まさにこのアルバムから飛び立って、雲突き抜けて、あの名曲、"Top of Morning"に辿り着くわけです。思えばTop of Morningのシングルのジャケットは飛行機だったなぁと今さら気がつきました。

彼等が飛び立つ前の、瑞々しくも青い世界が広がるアルバムです。


追記:そうそう彼らは過去にラズベリースのトリビュートに参加していて、これが1stに通じるシンプルさで、とっても良いんです。→ Listen !

Listen(He's After Me)  Bandcamp(Self Titled Album)

2015/02/22

Twerps


Twerps / Range Anxiety (Chapter Music / Merge, 2015)

「私のこと、頭の隅っこに置いておけ!」なんて卒業アルバムの後ろのページに書いてくれた、同期生の女の子。人の記憶は不思議なもんで、20年以上経ってるのに本当に頭の隅っこにその子がいるんです。友達でもなく、同じクラスだったわけでもなく、卒業間近、ふとしたキッカケでよく話すようになったんだけども。妙に記憶に残る、面白い人でした。

彼らもそういう意味での隅っこなのかも。音的に特に新しいことをしてるわけでもなく、表舞台には立たない、地味かもしれないけど、確実にいい曲を書いているバンド。なんだかんだ頭の中にこびりついてしまって、リピートしてしまう人懐っこいメロディ達。オーストラリアはメルボルンのバンド、トゥワープス、(おそらく)2枚目のアルバム。先行シングルの3曲目、"Back to You"を聴いて一発で気に入ってしまい、アルバムの発売を心待ちにしていました。懐かしさが込み上げてくるジャングリーなギターポップが心地よいです。

1分足らずの静かなインストで幕を開け、ヨラテンゴのような、徐々に歩みを進めていく展開のミディアムナンバーの2曲目"I Don't Mind"。シングルになった大好きな3曲目、"Back to You"はTully CraftとかLunchboxみたいな、90年代半ばにたくさんいたインディ・バンドを思いだす、青春疾走ギターポップ。少しおとぼけた感じの可愛らしいキーボードが楽しい1曲で、センスあるPVもミニマルな風景の切り取り方が面白くて見応えがあります。4曲目の"Stranger"は女性ボーカルをフィーチャーした、これまたハジけた田舎風ギターポップ。切ないメロディとギターが印象的な5曲目"New Moves"も耳に強く残る、1stの流れを汲むメランコリックな佳曲…とアルバムとしての流れは完璧で、後半も疾走感とゆるい曲がバランスよく配置されています。

彼らはCleanやFeeliesの影響を受けたサウンドと評されているけど、僕にはPastelsを始めとする初期のCreationから、自分が90年代にリアルタイムで通って来た、Magic Marker、Harriet、Slumberlandなんかのインディレーベルにも通じるサウンドだと思いました。要は90年代っぽさってことなんだけども。メンバー構成からして同郷のGo-Betweensとダブらせてしまうのも間違いではないと思います。

前作はもっとリヴァーブがかかっていて、初期Real Estateみたいな音だったんだけど、今回は彼らの住むメルボルンの空気がそのままダイレクトに伝わってくるよう。メルボルンはのんびりしていて、緑豊かで多様な文化が根付いている、住みやすさナンバーワンとも言われている都市。それって彼らの音にもアートワークにも表れている気がします。そうそうこのジャケット、メンバー写真の周りのペインティングがユニークで目をひくね。あとは単純に曲が良いし、聴きやすくなったんです。粒ぞろいの曲が詰まっているところも、このアルバムの特筆すべき点だと思います。

隅っこにいるからこそずっと記憶に残る、素晴らしいアルバムです。


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