2015/02/22

Twerps


Twerps / Range Anxiety (Chapter Music / Merge, 2015)

「私のこと、頭の隅っこに置いておけ!」なんて卒業アルバムの後ろのページに書いてくれた、同期生の女の子。人の記憶は不思議なもんで、20年以上経ってるのに本当に頭の隅っこにその子がいるんです。友達でもなく、同じクラスだったわけでもなく、卒業間近、ふとしたキッカケでよく話すようになったんだけども。妙に記憶に残る、面白い人でした。

彼らもそういう意味での隅っこなのかも。音的に特に新しいことをしてるわけでもなく、表舞台には立たない、地味かもしれないけど、確実にいい曲を書いているバンド。なんだかんだ頭の中にこびりついてしまって、リピートしてしまう人懐っこいメロディ達。オーストラリアはメルボルンのバンド、トゥワープス、(おそらく)2枚目のアルバム。先行シングルの3曲目、"Back to You"を聴いて一発で気に入ってしまい、アルバムの発売を心待ちにしていました。懐かしさが込み上げてくるジャングリーなギターポップが心地よいです。

1分足らずの静かなインストで幕を開け、ヨラテンゴのような、徐々に歩みを進めていく展開のミディアムナンバーの2曲目"I Don't Mind"。シングルになった大好きな3曲目、"Back to You"はTully CraftとかLunchboxみたいな、90年代半ばにたくさんいたインディ・バンドを思いだす、青春疾走ギターポップ。少しおとぼけた感じの可愛らしいキーボードが楽しい1曲で、センスあるPVもミニマルな風景の切り取り方が面白くて見応えがあります。4曲目の"Stranger"は女性ボーカルをフィーチャーした、これまたハジけた田舎風ギターポップ。切ないメロディとギターが印象的な5曲目"New Moves"も耳に強く残る、1stの流れを汲むメランコリックな佳曲…とアルバムとしての流れは完璧で、後半も疾走感とゆるい曲がバランスよく配置されています。

彼らはCleanやFeeliesの影響を受けたサウンドと評されているけど、僕にはPastelsを始めとする初期のCreationから、自分が90年代にリアルタイムで通って来た、Magic Marker、Harriet、Slumberlandなんかのインディレーベルにも通じるサウンドだと思いました。要は90年代っぽさってことなんだけども。メンバー構成からして同郷のGo-Betweensとダブらせてしまうのも間違いではないと思います。

前作はもっとリヴァーブがかかっていて、初期Real Estateみたいな音だったんだけど、今回は彼らの住むメルボルンの空気がそのままダイレクトに伝わってくるよう。メルボルンはのんびりしていて、緑豊かで多様な文化が根付いている、住みやすさナンバーワンとも言われている都市。それって彼らの音にもアートワークにも表れている気がします。そうそうこのジャケット、メンバー写真の周りのペインティングがユニークで目をひくね。あとは単純に曲が良いし、聴きやすくなったんです。粒ぞろいの曲が詰まっているところも、このアルバムの特筆すべき点だと思います。

隅っこにいるからこそずっと記憶に残る、素晴らしいアルバムです。


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