2013/11/04

The Proctors


The Proctors  / Everlasting Light (Shelflife)

お花のジャケットが印象的なプロクターズのアルバム。新作を出すのは18年振りとのことだけど、新人バンドのデビュー作と言ってもいいくらい、純度の高い音を鳴らしています。今年出た作品の中で間違いなくベスト3に入る素晴らしい内容。 

15曲も入ってるので中だるみしそうかと思いきや、最後までちゃんと聴けたのが意外でした。現在活動している、数多くのSarah系ギターポップバンドの中では群を抜いて曲がいいです。キャリアがあるだけに良い曲がいっぱいで、どの花を摘んでもハズレなし。音的に新鮮さはないけど、その分ずっと長く聴ける普遍的な作品だと思います。 キラキラとした光輝くアルペジオギターに男女ツインヴォーカル、プロデューサーのイアン・キャットによるキーボードがアルバム全体を纏うことで、ドリーミーな雰囲気を醸し出しています。そしてハウス・オブ・ラヴのテリー・ピッカーズによるサイケデリックなギターが、このアルバムをよりドラマティックに演出してくれている気がします。

蒼くて切ないメロディ全開の1曲目から涙腺が刺激されます。なんとなく18年という長い年月の間に経験したことが滲み出ているような、繊細でありつつ、強い意志を感じさせる曲。いやはや出だしからいきなりの名曲っぷりで、2曲目は大丈夫なのか?と心配しながら聞いてみると、これもすごくいい曲。まるで大好きなAberdeenを彷彿させる田園ギターポップで感動…。アルバムの2曲目って大事だね。2曲目の良し悪しでアルバムのクオリティが左右されるといっても過言ではないと思うんです。そしてやるせなさがこみ上げてくるギターのイントロに期待せずにはいられない3曲目は完全にField Mice。カバーじゃないよね?と耳を疑ったほど。そして個人的にアルバム中一番好きな4曲目は弱い自分の背中を後押ししてくれるような、ティーンエイジ・ファンクラブっぽさのある曲。Silver Screenを彷彿させるアコースティックな6曲目も幻想的で美しい。疾走感が気持ちいい7、10曲目も元気がもらえる。とくに後者は女性のパッパラコーラス入りで感涙…。12曲目も女性ヴォーカルをフィーチャーした、Camera Obscura〜ベルセバに通じてる曲。日が傾いてきて、このアルバムも終わりがだんだん近づいていることを告げているかのような切なさがあって好き。


個人的にラスト三曲がシューゲイズしてるのが興味深い。とくに14曲目の"Cellophane"はスローダイヴからシークレット・シャイン、はたまたTears Run Ringsまで通じる曲でたまらないのです。だからアルバムを聴き終えた頃には、このジャケットのお花もなんだか強い匂いを放っているように見えました。ライドの初期三部作がドラッギーなお花のジャケットだったように…。のどかなギターポップかと思いきや、実はシューゲイズというテーマも感じさせる奥深い作品。綺麗な花だと思って摘んだらまさかのトリップで裏切られました。ちなみにプロクターズのこのお花の絵は19世紀に活躍したオーストリアのデザイナー、コロマン・モーザーによるもの。Black Tambourineが去年出したEPでもコロマン・モーザーの作品が起用されていました。

今年は去年に比べて新譜を聴いてないような気がするけど、こうやって真面目に丁寧に作られたアルバムはちゃんと見つけて聴いていきたい。こんなに音が溢れかえってるからこそ、自分がいいと思ったものは何回も何回も聴いて、体に馴染ませて、自分の作品にすることがとても大事だと思います。今まで自分が選んで聴いてきたこの「耳」は常に鋭さを保っておきたいものです。

彼等のアルバムを一曲一曲噛み締めながら、今日も一日が始まります。

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